東温スタディでは、2011~2015年に歯周病検診として、唾液検査・歯周ポケットを同じ時に測定し、歯周病の評価を行ってきました。これまで、歯周病と全身の炎症反応との関連が報告されていますが、唾液検査で歯周病の程度を評価した研究は少ないため、2011年から2015年にかけて東温スタディに参加した男女計1,815人を対象に、唾液検査を実施し、唾液検査結果と全身炎症反応との関連を分析しました。その結果、痩せ~普通体重に比べ、過体重・肥満の方において、唾液中LDH(乳酸脱水素酵素:歯周病が進行しているほど高値)の値が高い人ほど、高炎症反応の出現オッズ比が高いことがわかりました(国際専門誌 Journal of Periodontal Research誌 2018年53巻487-494ページ)。
唾液中のLDHは歯周病の進行度と関連する
唾液中のLDHと歯周病の指標である歯周ポケットの深さや出血の割合は、性別や年齢、肥満指数(BMI)、生活習慣病、飲酒、喫煙、運動習慣などの影響を考慮した上で分析した結果、唾液中のLDHが高いほど歯周ポケットが深いことが確認できました。
図1 唾液中の乳酸脱水素酵素と歯周ポケットの深さとの関連
過体重・肥満は全身炎症反応と歯周病の関連が高い
肥満指数(BMI)をBMI25未満(痩せ~普通体重)、BMI25以上(過体重・肥満)で層別化し、全身炎症反応と歯周病の関連を、性別や年齢、生活習慣病、飲酒、喫煙、運動習慣などの影響を考慮した上で分析しました。その結果、痩せ~普通体重の人と比べ、過体重・肥満の人は、高炎症反応(高感度C反応性たんぱく(CRP)が1mg/L以上)のオッズ比が唾液中LDHの高い群において1.9倍と統計学的に有意に高いことが認められました。
今回の研究は横断的研究であり、今後さらなる研究成果の積み上げが必要ですが、歯周病の進行によりLDHが高い人ほど、心疾患との関連が示されている高感度CRPが高いことは、歯周病が心疾患と関連する一機序を示したと考えます。
図2 唾液中LDHと高炎症反応(CRP≧1.0mg/L)との関連
■ 研究のハイライト
- ガムを噛んで出した唾液中のLDHは、歯周病の進行と関連している。
- 痩せ~普通体重の人と比べ、過体重・肥満の人は、高炎症反応(高感度CRP1mg/L以上)のオッズ比が唾液中LDHの高い群において有意に高かった。