1.はじめに
生活習慣病や、認知症、フレイルを予防するためには適切な運動、栄養、睡眠が必要です。我々は、これらのような生活習慣と循環器疾患、メタボリックシンドローム、糖尿病、認知症、フレイルなどの様々な疾患との関連を詳細に検討するため、2009年度から、東温市におきまして、効果的な循環器疾患予防のためのより良い科学的根拠を得ることを目的にした研究(「東温市における保健事業の評価、ならびに循環器疾患発症にかかる新たな危険因子の検索を目的とするコホート研究(東温スタディ)」を開始いたしました。
この研究は、年齢・性別に偏りなく、多くの方に長期間参加して頂くことによって、正確で信頼される結果を出すことが出来ると考えられています。
とうおん健康づくり会、東温市市民福祉部、及び東温市民の皆様のご協力、ご支援のおかげで、これまでに約2,500名の住民の方々に参加していただいており、2014年から5年後、2019年から10年後、2024年度から15年後の追跡調査が始まっております。
東温スタディにより、循環器疾患・メタボリックシンドローム・糖尿病・認知症・フレイルなどを予防するための科学的な新しい証拠を集め、東温市民の皆様や日本人全体の健康寿命を延ばすことを目標としております。
先頭へ2.研究の目的
本研究は、循環器疾患、糖尿病、腎疾患、認知症、フレイル等を予防するために、通常の健診項目に加えて、動脈硬化の程度や、糖代謝(糖尿病の危険性)・脂質代謝、認知機能や体力の状態をより詳細に把握し、早期に改善するための方策を立てるために実施します。
例えば、75gぶどう糖負荷試験は、ぶどう糖入りの飲料水を飲んでいただき、1時間後、2時間後の血糖値、インスリン値などを測定します。これは、食後に血糖値が高くなっていないかどうか、インスリンが正常に働いているかどうかを見るために行います。
他にも自律神経系機能の評価、頸動脈硬化の評価、心臓エコー検査等詳細な検査を実施します。認知機能や体力・体組成測定を行い、加齢に伴う健康状態の変化も把握します。また、口腔内の詳細な診察や検査を行い、歯周状態やオーラルフレイルについても調査を行います。さらに、生活習慣などについて詳細な質問紙調査も実施しております。
先頭へ3.研究の方法
この研究では、下記の表に示しておりますような項目の測定を行います。これらの情報は、愛媛大学に集められ整理されます。また、採血(約30ml)で生じる残余血清、尿検査で生じる残余尿、唾液検査で生じる残余唾液は、将来動脈硬化に関連する新たな検査が発見されたとき、その測定が有効かどうか確認するため、愛媛大学において、研究予定期間内凍結保存致します。
このような詳細な調査を通じて脳卒中や心筋梗塞といった循環器疾患や糖尿病、認知症等を起こす要因を検索することにより、東温市での疾病予防対策に役立てて行きます。
表 検査項目の概要
検 査 項 目 | |
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(ア) | 高齢者医療確保法に基づく特定健診の実施項目 |
(イ) | 75gぶどう糖負荷試験の1、2時間後の血糖値ならびにインスリン |
(ウ) | (ア)で把握される項目以外の血液検査項目(空腹時インスリン値、尿酸値、血清アルブミン値、白血球、赤血球、ヘモグロビン、高感度CRP等) |
(エ) | 検尿、尿アルブミン等 |
(オ) | 心エコー検査 |
(カ) | 中心血圧検査 |
(キ) | 心電図検査 |
(ク) | 自律神経系検査 |
(ケ) | 頸動脈エコー検査 |
(コ) | 認知機能検査 |
(サ) | 体力調査(握力、3m Timed Up & Go Test)、体組成測定 |
(シ) | 口腔検査(歯周病検査、欠損歯式および義歯所見、口腔機能低下症、嚥下機能) |
(ス) | 服薬状況調査 |
(セ) | 生活習慣・健康状態に関する質問紙調査(不定期で郵送調査や電話調査も実施) |
(ソ) | 疾病調査(心筋梗塞・脳卒中・認知症をはじめとする生活習慣病の情報等) |
2023年度まで実施していた項目
検 査 項 目 | |
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A | 血管弾性検査 |
B | 洗口液検査 |
C | 東洋医学検査 |
D | PVT(Psychomotor Vigilance Task)検査 |
E | 検査機器を貸し出して行って検査
身体活動量測定(加速度計) 家庭血圧計による早朝、就寝前家庭血圧値 睡眠呼吸障害検査 24時間ホルター心電図調査 |
4.研究の予定期間
この研究の予定期間は、登録されてから2040年3月31日までです。
先頭へ5.研究の参加予定人数
この研究は、東温市在住30~79歳(研究参加時)の約2,500名の方に参加いただいております。今後も新規参加者を募り、4000名を目標人数としています。
先頭へ6.個人情報の保護
本研究は愛媛大学医学部附属病院臨床研究倫理審査委員会の厳密な審査を終えその承認を得て実施しています(1705011号)。
今回の研究で得られたデータは、愛媛大学医学部に一括して集められ個人情報が特定できないよう匿名化したうえで管理されます。得られましたデータは、鍵のかかる保管庫に保存し、データが入力されているパソコンは、許可されたものだけが扱えるようにします。皆様の個人情報漏洩の危険性はなく、その点で不利益はありません。また、この研究の目的以外には利用されません。
ただし、愛媛大学農学部においても調査に関する窓口業務を行うため、窓口業務に必要な情報については共有しております。
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