東温スタディでは、2011年より東洋医学健診として舌診を行い、舌苔(舌の表面に付着する苔状のもの)の色について評価を行ってきました。
東洋医学では、舌苔の色が黄色い「黄苔」は糖尿病の重要な診察所見ですが、これまでに黄苔と糖尿病との関連について検討した疫学研究は行われていません。そこで、私たちは2011年から2014年に東温スタディに参加した男女計969名を対象に、黄苔と糖尿病型ならびに耐糖能異常との関連について検討しました。その結果、舌苔が白い(白苔)者に比べ、明らかな黄苔を有する者では、糖尿病型ならびに耐糖能異常の出現オッズ比が高いことがわかりました。(国際専門誌 Journal of Epidemiology 2018年28巻287-291ページ)
明らかな黄苔を有する者は糖尿病型ならびに耐糖能異常を有している可能性が高い
舌苔を、白苔・白黄苔・黄苔の3段階に分類し、ブドウ糖負荷試験により糖尿病型ならびに耐糖能異常を診断しました。性別や年齢、肥満指数(BMI)、好ましくない生活習慣は糖尿病型や耐糖能異常のリスクを高めることから、これらの影響を考慮した上で黄苔と糖尿病型ならびに耐糖能異常との関連を分析しました。その結果、白苔を有する者に比べ、明らかな黄苔を有する者では、糖尿病型のオッズ比が2.2倍と統計学的に有意に高く、また耐糖能異常のオッズ比も1.4倍と統計学的に高い傾向が認められました。
今回の研究は横断的研究であり、黄苔と糖尿病の因果関係は明らかではありません。今後さらなる研究成果の積み上げが必要ですが、自覚症状のみられない糖尿病において、黄苔が早期発見の有用な指標となる可能性が考えられました。
■ 研究のハイライト
- 東洋医学において黄苔(黄色い舌の苔がある状態)は糖尿病の臨床所見の一つとして用いられてきている。
- 黄苔を有している人は黄苔がない人に比べ、糖尿病型のオッズ比が有意に高かった。
- 黄苔を有している人は黄苔がない人に比べ、耐糖能異常のオッズ比が高い傾向を認めた。