研究成果

歯痕舌と夜間の間欠的低酸素血症との関連について

 東温スタディでは、2011年より東洋医学健診として舌診を行い、歯痕舌の評価を行ってきました。歯痕舌とは舌の周囲にギザギザとした歯形がついた状態で、東洋医学では体の水分代謝異常を表し、西洋医学では舌の肥大や歯ぎしりと関連することが報告されています。
 これまでに、睡眠時無呼吸をもつ人に歯痕舌を有する人が多いことが報告されていますが、日本人を対象にした疫学研究は行われていません。そこで、私たちは2011年から2014年に東温スタディに参加した男女計1,130名を対象に、歯痕舌と睡眠呼吸障害の代替指標である夜間の間欠的低酸素血症との関連について検討しました。その結果、歯痕舌がない者に比べ、中等度以上の歯痕舌を有する者では、中等度以上の間欠的低酸素血症の出現オッズ比が高いことがわかりました。また、この関連は非肥満者よりも肥満者で明らかに認められました。(国際専門誌 Journal of Oral Rehabilitation 2017年44巻602-609ページ)

歯痕舌を有する者では、夜間の間欠的低酸素血症が多い

 歯痕舌の評価は、なし・軽度・中等度以上の3段階に分類し、間欠的低酸素血症はパルスオキシメーターにより夜間睡眠時の動脈血酸素飽和度を測定し、酸素飽和度低下指数が15回以上を中等度以上の間欠的低酸素血症と定義しました。性別や年齢、肥満指数(BMI)、飲酒習慣などは間欠的低酸素血症のリスクを高めることから、これらの影響を考慮した上で、歯痕舌と間欠的低酸素血症との関連を検討しました。その結果、歯痕舌がない者に比べ、中等度以上の歯痕を有するものでは、間欠的低酸素血症のオッズ比が2.4倍と高いことがわかりました。さらに肥満の有無に分けて解析した結果、非肥満者では関連は認められませんでしたが、肥満者では中等度以上の歯痕舌を有する者で4.7倍も間欠的低酸素血症の出現オッズ比が高いことがわかりました。
 歯痕舌は睡眠時無呼吸を有する人に特徴的な舌の肥大や歯ぎしり等とも関連しています。今後さらなる研究成果が必要ですが、肥満者において歯痕舌を有している場合、睡眠呼吸障害を有しているリスクが高まることに留意する必要があると考えられます。

■ 研究のハイライト

  • 歯痕舌は睡眠時無呼吸の特徴(歯ぎしり等)との関連があり、海外の研究では睡眠時無呼吸をもつ人に歯痕舌を有する人が多いことが報告されている。
  • 東温スタディにおいて、歯痕舌を有する者では、夜間の間欠的低酸素血症の有病率が高く、この傾向は特に肥満者においてより顕著であった。

図1 歯痕舌と夜間の間欠的低酸素血症との関連

図1 歯痕舌と夜間の間欠的低酸素血症との関連

図2 歯痕舌と夜間の間欠的低酸素血症との関連(肥満層別)

図2 歯痕舌と夜間の間欠的低酸素血症との関連(肥満層別)

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