研究成果

血中βカロテン濃度とインスリン抵抗性・感受性との関連について

 東温スタディでは、2009、10年受診者(男女計951名)の方の血中βカロテン濃度(ビタミンAの前駆体)、ならびにビタミンA濃度を測定し、インスリン抵抗性・感受性との関連について国際学術誌に報告しました。
 これまでの報告では、βカロテンを豊富に含む野菜摂取量が多いほど、糖尿病を発症される方が少ないことが示されています。一方で、野菜に含まれている栄養素と糖尿病や、糖尿病が伴う1つの病態であるインスリン抵抗性や感受性の低下との関連を見た報告はあまりありませんでした。
 今回の結果、血中のβカロテン濃度が高いほどインスリン抵抗性や感受性低下の方が少ないこと、また緑黄色野菜摂取量が多いことわかりました。(国際専門誌 Nutrition 2015年31巻975-980ページ)。

血中のβカロテン濃度が高いほど、インスリン抵抗性や感受性の低下に予防的な働きをしている

 血中のβカロテン濃度によって4つのグループに分け、またインスリン抵抗性・感受性の指標である、HOMA指数、感受性の指標であるMatsuda indexの2指標を、集団内で状態が悪化している上位1/4方をそれぞれインスリン抵抗性、インスリン感受性低下と定義しました。
 年齢や肥満などの要因によってインスリン抵抗性、インスリン感受性低下リスクが高くなることがわかっていますので、あらかじめそれらの影響を除いた上で、血中βカロテン濃度、ビタミンA濃度とインスリン抵抗性・感受性低下との関連を検討しました。その結果、血中のビタミンA濃度とインスリン抵抗性、インスリン感受性との関連は見られませんでした。一方で、血中のβカロテン濃度の最も低いグループに比べ、最も高いグループではインスリン抵抗性、インスリン感受性低下の割合の比であるオッズ比が小さく、したがってインスリン抵抗性、インスリン感受性低下の割合が少ないことが分かりました(図1)。この傾向は、男性よりも女性、また肥満者(Body mass indexが25以上)よりも非肥満者の方がみられました(図2)。
 また、今回の研究では、血中のβカロテン濃度が高い人ほど、緑黄色野菜の摂取量が多いこともわかりました。
 今回の研究では、βカロテン濃度が高いことがインスリン抵抗性、インスリン感受性を将来的に予防することは言い切れず、長期にわたる追跡調査が必要となります。
 今回の研究やこれまでの他の研究の結果を踏まえまして、糖尿病予防のためにも、緑黄色野菜をよく食べることで血中βカロテン濃度を高めていくことが大切です。

■ 研究のハイライト

  • 血中のβカロテン(野菜などに多いビタミンAの前駆体)を測定した。
  • 血中のβカロテン濃度が高いほど緑黄色野菜の摂取量が多いことが分かった。
  • 血中のβカロテン濃度が高いほど、糖尿病が進行するうえで伴う1つの病態であるインスリン抵抗性や感受性の低下の方が少ないことが分かった。
  • 緑黄色野菜をよく食べることで血中βカロテン濃度を高まり、糖尿病予防につながる可能性が示めされた。

図1 血中βカロテン濃度とインスリン抵抗性・感受性低下との関連

図1 血中βカロテン濃度とインスリン抵抗性・感受性低下との関連

図2 男女別、肥満別の血中βカロテン濃度とインスリン抵抗性・感受性低下との関連

男女別
男女別

肥満別
肥満別
⋆肥満:Body mass index 25以上

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